口腔筋機能療法(MFT)
MFT(MFT: ORAL MYOFUNCTIONAL THERAPY)
口腔習癖は矯正装置で治療しても、なかなか癖が改善しないので、後戻りをしてしまう事が多いです。
それを防ぐには、癖を無くす必要があります。それが、MFT(MFT: ORAL MYOFUNCTIONAL THERAPY)です。
歯並びには、遺伝だけではなくお口の周りの癖が大きな影響を及ぼしています。例えば、上の歯と下の歯の間から舌を常に出していたり、指しゃぶりをしていると開咬(前歯が咬み合わない)や上顎前突(出っ歯)の原因になります。
また慢性鼻炎などによる口呼吸で常に口があいている状態が続くと、お口の周りの筋肉が弱くなり正常な下(飲み込み)が出来ず、歯並びや舌の位置に影響を及ぼします。MFTとは、このような癖が原因の筋肉の不調和をお口の周り(舌・頬・唇)の筋トレをして正常な舌位・嚥下を獲得する療法です。
矯正治療によって歯並びをなおしても、お口周りの癖が改善されないと、矯正装置をはずした後、後戻りする可能性が非常に高くなります。
MFTを矯正治療と並行して行うことにより、治療効果が上がり、予後もよくなります。
歯並びが乱れる癖や習慣
子供の身体は成長段階にあるため、歯槽骨でも歯並びや咬み合わせに悪影響を与えてしまいます。こうした悪影響を招く原因として、以下のものが挙げられます。
①指しゃぶり
指しゃぶりは、指で上下の咬み合わせを悪くする状態になるほか、上の前歯を裏から押し続けることになるため、開咬や上顎前突を引き起こしやすくなります。
②舌癖
常に舌で前歯を押し出したり、食べ物を飲み込むときに舌を出したりする箱を舌癖と言います。舌癖は前歯の歯並びに悪影響を及ぼします。
③口呼吸
慢性的な鼻炎などで鼻がつまり口呼吸が習慣化すると、常に口が開いた状態になり、顔面の筋肉や骨格、咬み合わせに悪影響を及ぼします。
④不自然な顎の動き
爪や唇を咬む癖は、胸や歯ぐきに大きな負担になります。不自然な顎の動きが習慣化して、顎関節に悪影響を及ぼします。
⑤頬杖
頬杖は、人間の身体の中でももっとも重い頭部を顎で支える行為。重みが一点に集中することで、顎が変形してしまうことがあります。
口腔筋機能療法の実際
どのようなお口周りの癖があるかによって筋トレ内容は患者様ごとに変わってきますが、いくつか代表的なものをご紹介します。
ティップアンドスティック(ベーシックエクササイズより)
アイスの棒を口に前で持ち、舌の先をまっすぐに尖らせて強く押し合います。
※舌が曲がらないようにしっかりと力を入れる
※唇や歯を閉じて舌を支えない
スポットポジション
舌の先をいつもつけておく場所を覚えるために行います。
舌尖をとがらせてスポットに当てます。
※舌の先を丸めないように中ウイする
※アイスの棒でスポットに触れて、位置を確認して舌尖を当てて練習する
ポッピング
舌を上に持ち上げる力を鍛えます。
①舌全体を上あごに吸い上げ、口を大きく開けて舌の裏のスジをのばします。
※舌の先はスポットについていること
※舌後方までしっかりと上あごに吸い付いていること
※舌が上の歯を覆わず、上あごにしっかり収まっていること
※下あごを前に出さないこと
②舌をよく吸い上げると、耐えられなくなって舌が勢いよく『ポンッ』と音を立てて下に降ります
※音を出すことよりも、1の時点でしっかりと舌のスジを延ばすことが重要
③ゆっくりと10回ほど繰り返しましょう
※はやく「ボンッ』『ポンッ』とならすよりも一つ一つの動作を丁寧にゆっくり行うこと
ポスチャー
舌の先をスポットにつけておくことを習慣化するために行います。
舌の先端をスポットにつけた状態で犬歯の後ろでストローをかみます。なるべくストローに頼らないでスポットの位置に舌尖を置き続けましょう。
※レッスンの序盤では5分間。その後レッスンが進むにつれて10分、15分…と時間を延長し行う。
お口まわりの筋肉の機能が整っている状態
以下は、お口まわりの筋肉の機能が整っている状態です。以下のような状態でない 場合、何らかの問題が生じる可能性があります。
安静時 | 唇がリラックスしており自然な鼻呼吸ができます。舌は上の顎にくっつき、上下の歯は離れています。 |
咀嚼時 |
食べ物を前歯で噛み切り、小臼歯で細かく砕き、大臼歯でつぶします。舌で食べ物が歯の上にのるように動かし、唇をとじたまま咀嚼します。飲み込むときは、上下の歯が合わさります。 |
口呼吸
本来、呼吸はエアフィルターの役割を果たす鼻で行い、ほこりやウィルスの侵入を 防いで吸気時に温度調整や湿度調整を行います。お口まわりの筋肉が弱ると口が 開きやすくなり、無意識に口呼吸になりやすくなります。口呼吸を行うことで、以下 のような悪影響をおよぼします。
口呼吸による悪影響
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不正咬合
不正咬合とは歯並びや噛み合わせが悪いことです。お口まわりの筋肉が弱いと、か たい物を食べられなくなり、やわらかい物ばかり食べるようになります。そして食事のときの咀嚼回数が減り、さらに食事の時間も短くなります。こうなるとお口まわりの筋肉が弱体化するサイクルに入るのです。すると本来生えるべきところに歯が生えにくくなり、歯並びが乱れやすくなってしまうのです。